個人型確定拠出年金(iDeCo)とは?
加入方法や2022年の法改正について解説します
iDeCo(イデコ)という言葉をよく聞くけど、どんな仕組みになっているのかわからないという人も多いのではないでしょうか?
また、2022年に法改正されたこともあって、どんなところが変わったのか気になる人もいるでしょう。
この記事ではiDeCo(個人型確定拠出年金)について、利用するメリットや加入方法、2022年の法改正などについて解説します。
公開日:
更新日:2023.04.02
目次
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、自分で決めた掛金を積み立て、それを運用することで、60歳以降に国民年金のような「公的年金」とは別に給付を受けられる私的年金制度のことです。
「年金」と聞くと、国民全員に加入義務のある「公的年金」を思い浮かべますが、iDeCoは「個人型」とあるように加入が任意であり、申込みから掛金の積立や運用まですべて自分で行い、60歳以降になれば掛金と運用益の合計額を「年金」または「一時金」として受け取れます。
何のために加入する?
iDeCoは私的年金制度の1つであり、より豊かな老後の生活を送っていただくための資産形成手段として位置づけられています。
老後の生活費は、2019年に金融庁の金融審議会が発表した報告書において「老後30年間で約2,000万円が不足する」とあり、公的年金だけでの生活が難しいといわれています。※1
また、生命保険文化センターの統計では、「老後の最低日常生活費」が23万2,000円、「ゆとりある老後生活費」が37万9,000円となっています。※2
例えば、自営業者の場合は国民年金のみの加入のため、夫婦の受給額が約11万2,000円となりますが、「老後の最低日常生活費」からみれば、12万円が足りない状態です。
また、会社員は厚生年金保険へ加入しており、配偶者が扶養に入っている場合は、配偶者は保険料を納付することなく国民年金を受け取ることができます。その場合の夫婦の受給額は約25万6,000円となっており、「老後の最低日常生活費」は超えるものの、「ゆとりある老後生活費」からみれば、12万3,000円足りません。
そこで、iDeCoで掛金を積立して運用することで、公的年金とは別に掛金と運用益を受け取れるようになります。iDeCoは、公的年金だけでは老後の生活費に不安を感じる方には、うってつけの制度と言えるでしょう。
※1
出典:金融庁「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 『高齢社会における資産形成・管理』令和元年6月3日」(金融庁)
※2
出典:公益財団法人 生命保険文化センター「老後の生活費はいくらくらい必要と考える?」
iDeCoに加入するメリット
iDeCoは税金面のメリットがあり、「積立時」「運用時」「受取時」にそれぞれ優遇措置が設けられています。一般的な貯蓄や、その他の金融商品ではそのようなメリットがないため、iDeCoのメリットは大きいといえるでしょう。
順に仕組みを解説します。
掛金は全額所得控除の対象となります
iDeCoで積み立てる掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象となるため、預貯金をするよりも節税効果があります。
毎月1万円を貯蓄する場合と、iDeCoで毎月1万円の掛金を運用する場合を比べてみましょう。
預貯金の場合、年間12万円分の貯蓄となるものの、所得控除がないため税金に影響はありません。
iDeCoの場合、年間12万円分を掛金として積み立てられ、全額が所得控除の対象となり、所得税と住民税がそれぞれ10%とすると年間2万4,000円の税金が軽減されます。
運用益は非課税で再投資が可能です
iDeCoで運用して得られた運用益には、税金がかかりません。そのため得られた運用益を活用してさらなる再投資が可能です。
例えば、証券会社を通じて株式・投資信託などを購入した場合、その運用益に対して源泉分離課税がなされます。
つまり、一般の金融商品では運用益から源泉徴収分が差し引かれた利益しか得られませんが、iDeCoの場合は運用益に税金がかからず100%の運用益が得られるので、一般の金融商品より運用益を効果的に活用することができます。
受け取るときも税制優遇があります
iDeCoで運用を終えて60歳以降に受け取る場合、年金形式で分割して受け取れば「公的年金等控除」が、一時金としてまとめて受け取れば「退職所得控除」が適用され、それぞれの控除額を所得から差し引くことができるため、税金が軽減されます。
公的年金等控除の場合、公的年金やiDeCoなど同じ控除を利用できる年金の年間合計額から計算します。年金以外の年間所得が1,000万円以下の場合、65歳未満では公的年金などの収入金額の合計額が60万円以下、65歳以上になると合計額が110万円以下であれば所得税がかかりません
退職所得控除は、一般的に退職金を受け取った場合に適用されるものです。勤続年数によって控除額が変わり、iDeCoの場合積立期間を勤続年数とみなして控除額を計算します。
何から始めれば良い?
iDeCoを始めるにあたって、大きく4つの手順があります。
手順1:iDeCoの掛金限度額を把握する
iDeCoは公的年金と密接にかかわっており、国民年金の被保険者の違いや、勤めている会社で企業年金制度に加入しているかどうかで掛金限度額が異なります。
公的年金の被保険者 | 主な職業 | 企業年金の有無 | 月額掛金限度額 |
国民年金第1号被保険者任意加入被保険者 | 自営業やフリーランスなど | ― | 68,000円 |
国民年金第2号被保険者 | 会社員 | 企業年金なし | 23,000円 |
企業型確定拠出年金(DC)あり | 20,000円 | ||
確定給付企業年金(DB)あり | 12,000円 | ||
企業型DCとDBあり | 12,000円 | ||
公務員 | 12,000円 | ||
国民年金第3号被保険者 | 専業主婦(夫) | 23,000円 |
例えば、自分は厚生年金に加入していて、会社で確定給付企業年金(DB)も運用している場合、iDeCoでの掛金限度額は1万2,000円です。
一度ご自身の会社に企業年金があるかどうか確認してみてください。
手順2:掛金を決める
iDeCoの掛金は、月額5,000円を最低掛金額として、1,000円単位で、自身の掛金限度額の範囲内で設定ができます。
例えば、子育てなどで投資に使う金額を多く準備することがむずかしい場合は、比較的少額の5,000円から始められます。自営業で国民年金だけでは心許ないという人であれば、月額6万8,000円の掛金限度額いっぱいまで積み立てが可能です。
掛金は60歳にならないと引き出せないため、無理のない範囲で掛金額を設定すると良いでしょう。
手順3:運用商品を検討する
iDeCoの運用商品には、リスクを抑えた「元本確保型商品」とリスクとリターンに幅がある「投資信託」の2つがあります。
元本確保型商品は、原則として元本が確保されており、所定の利息が上乗せされるもので、主に定期預金や保険商品を使って運用します。
投資信託商品は、国内外の債券や株式などに分けられ、複数の資産を組み合わせたバランス型などがあります。資産の組み合わせによっては、リスクが高くその分リターンが得られる商品や、リターンは少ないもののリスクを抑えた商品もあります。
例えば、リスクを極力抑えたいと考えている人は「元本確保型商品」がおすすめです。リスクを取ってでもリターンを増やしたいのであれば「投資信託」となるでしょう。老後の生活をどのようなものにしたいかも踏まえて運用商品を検討すると良いです。
手順4:金融機関を決める
iDeCoを始める場合、実際に運用を管理する金融機関を通じて加入の申込みを行わなければなりません。複数の金融機関で申込みができないため、多くの金融機関から1社だけを選ぶ必要があります。
大抵の金融機関ではiDeCoの取り扱いをしていますが、サービス内容は金融機関ごとに異なります。金融機関を選ぶポイントは、iDeCoで運用できる商品ラインアップや、手続きのスムーズさ、毎月の管理手数料額などです。
さまざまな内容を比較検討し、適した金融機関を選ぶことをおすすめします。
iDeCoに加入する方法
iDeCoに加入する場合、iDeCoを取り扱っている金融機関で加入手続きすることはご紹介しました。実際には、金融機関において「個人型年金加入申出書」という書面があるため、必要事項を記入して提出すれば始められます。
千葉銀行であれば、土日も対応している「ちばぎん確定拠出年金コールセンター」をご用意しておりますので、お気軽にご相談ください。
iDeCoの注意点
iDeCoを始めるにあたって、注意すべきことが3つあります。
・原則60歳まで引き出せない
iDeCoは公的年金とは別に給付を受けられる私的年金制度であるため、積み立てた掛金は引き出すことができません。ただし加入者が亡くなったときや、病気やケガで障がいを負った場合、60歳になっていなくても積み立てた掛金や運用益を受け取れます。簡単に引き出すことができないため、無理に掛金を積み立てるのではなく、長期間積み立てられる金額に設定することが大切です。
・月額掛金限度額が人によって異なる
iDeCoの掛金限度額は、自営業者と会社員で異なります。また、会社員でも企業年金の有無によって変わってくるため、これから加入を検討している人は、該当する月額掛金限度額を調べて確認しておくことが必要です。
・手数料がかかる
iDeCoで運用すると一定の手数料が発生します。手数料は運用する金融機関によって異なるため、どのくらいの手数料がかかるかを把握しておく必要があるでしょう。
特に、毎月発生する口座管理手数料は、仮にiDeCoで掛金の積み立てを停止していたとしても口座管理手数料は発生し続けるため注意が必要です。
2022年法改正で何が変わった?
iDeCoは2022年の法改正によって、受給開始時期や加入可能年齢の拡大、企業型確定拠出年金加入者のiDeCo加入の条件緩和といった変更された部分があります。
それぞれの改正前と改正後の変更点を解説します。
加入可能年齢が拡大
iDeCoの場合、法改正前は20歳から60歳未満の国民年金被保険者が加入できました。
改正後の2022年5月からは、一部の被保険者は60歳以上65歳未満でも加入ができるように拡大されています。
詳しい条件を確認していきましょう。
60歳以上で、厚生年金保険に加入している国民年金第2号被保険者や、国民年金任意加入被保険者はiDeCoに加入できます。
国民年金の第2号被保険者の場合、60歳になっても掛金の拠出は停止されず65歳になるまで継続します。
国民年金の第1号被保険者や第3号被保険者の場合、60歳で掛金の拠出は停止してしまいます。しかし60歳以降に任意加入被保険者になれば60歳以上65歳未満でもiDeCoに加入できます。なお、掛金継続の手続きが必要です。
また海外居住者で国民年金任意加入被保険者であれば、20歳から65歳未満まで加入ができます。
60歳から65歳まで拡大されたことで、その間の老後資産が積み増しできたり、掛金の所得控除が受けられたりなど、加入可能年齢が拡大されたことによるメリットは大きいといえるでしょう。
受取開始時期が延長
法改正前は給付金の受給開始時期が60歳から70歳までだったものが、法改正後、75歳まで引き上げられました。公的年金の受給開始時期が70歳から75歳に繰下げできるようになったことに伴い、iDeCoも選択肢が拡大されました。
例えば、公的年金の受給額を増やすために75歳の繰下げ受給を考えている場合、iDeCoも同様に75歳で受給を開始することで毎月の老後生活費を増やすこともできます。
また公的年金の受給額は65歳から受け取りつつ、70歳まで働き、iDeCoの受給を75歳からにして医療や介護がかかる可能性に備えるという考え方もあります。
いずれにせよ受給開始時期が延長されたことで、老後の生活設計を考える幅が持てるようになったといえます。
企業型確定拠出年金(DC)とiDeCoを併用する場合の条件緩和
法改正前は、企業型DCに加入している場合、規約に「会社の掛金上限をiDeCoの限度額分引き下げること」が明記されていなければ、iDeCoに加入できませんでした。しかし法改正後からは規約に明記されていなくても併用できるように条件が緩和されています。
iDeCoをおすすめするのはこんな人!
iDeCoは、公的年金の受給額や退職金の受取額が少ない方や、個人事業主やフリーランスにもおすすめといえます。
iDeCoは、公的年金の受給額とは別に年金が給付されるため、足りないといわれる老後生活費に上乗せできるものとなります。老齢基礎年金しか受け取れない個人事業主やフリーランスなど、将来の年金額に不安がある場合、iDeCoに加入しておいた方が良いといえるでしょう。
また、iDeCoは一時金として受け取れば退職所得控除を利用できるため、退職金制度を作らなければもらえない個人事業主やフリーランスのほか、退職金制度を設けていない会社に勤めている会社員の方にもおすすめです。
老後の資金に不安な方は少額からでも始めてみよう
iDeCoの仕組みやメリット、加入方法について解説してきました。iDeCoは、「老後2,000万円問題」とあるように老後の生活費が足りない場合や、充実した老後生活を迎えたい場合に活用できる年金制度といえるでしょう。
iDeCoで運用する商品によっては、投資性の高い商品もあるため、運用状況によっては損失が発生する可能性もあります。しかし、リスクを抑えた「元本確保型商品」というのもあるため、投資が苦手という人でも安心して運用することが可能です。
千葉銀行では、これまで解説してきたiDeCoの申込みを受け付けています。iDeCoは節税効果があり、老後の備えを充実させることができるためおすすめです。
iDeCoのお悩みは「ちばぎん確定拠出年金コールセンター」へお気軽にご相談ください
ちばぎん確定拠出年金コールセンターには、専門のスタッフがおりますので、iDeCoのお悩みごとがあれば、お気軽にご相談ください。
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個人型確定拠出年金の特徴 および ご注意いただきたい事項
- 税制面のメリットがあります。
- 転職したときなどに積立資産の持ち運びが可能です。
- 毎月の掛金は加入者ご自身が拠出します。
- 掛金額の変更は1年(前年12月分の掛金~11月分の掛金の間)に1回限りとなります。
- 運用商品は加入者ご自身が選択します。運用成果に応じて受取額が変動しますので、受取額が投資元本(掛金でとの総額)を下回る可能性があります。将来の受取額は運用実績により個人ごとに異なります。
- 加入者ご自身の残高と運用状況は専用Webサイトまたはコールセンターにてご確認いただけます。
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加入から受取りが終了するまで、所定の手数料が必要となります。手数料は加入者の場合は掛金から、運用指図者の場合は資産残高から差し引かれます。下記手数料は「ちばぎん確定拠出年金個人型プラン」の例です。また下記の他にもご負担いただく手数料が発生する場合があります。詳しくは「ちばぎん確定拠出年金コールセンター」へお問い合わせください。
手数料 内訳 加入者
(掛金を拠出する方)運用指図者
(掛金を拠出しない方)加入手数料
(加入時のみ)国民年金基金連合会 2,829円 2,829円 管理手数料 国民年金基金連合会 掛金収納1回あたり105円(年間105円~1,260円) ― 運営管理機関
(千葉銀行)月額319円
(年間3,828円)月額319円
(年間3,828円)事務委託先金融機関
(三菱UFJ信託銀行・日本マスタートラスト信託銀行)月額66円
(年間792円)月額66円
(年間792円)合計 掛金収納月は490円
上記以外の月は385円
(年間4,725円~5,880円)月額385円
(年間4,620円) -
原則60歳まで途中の引出し、脱退はできません。60歳以降に年金または一時金で受取れます。なお、60歳時点での通算加入者等期間が10年未満の場合は、最大で65歳まで受取りを開始できる年齢が遅くなります。
通算加入者等期間※1 受取開始可能年齢※2 10年以上 60歳以上75歳未満 8年以上 10年未満 61歳以上75歳未満 6年以上 8年未満 62歳以上75歳未満 4年以上 6年未満 63歳以上75歳未満 2年以上 4年未満 64歳以上75歳未満 1か月以上 2年未満 65歳以上75歳未満 ※1.通算加入者等期間とは、60歳になる前の企業型・個人型確定拠出年金の加入者や運用指図者であった期間の合計です。
※2.60歳以降、初めて個人型確定拠出年金に加入される方などで通算加入者等期間を有しない場合は、加入者資格取得日等から起算して5年を経過した日が受取開始可能な日となります。
※75歳までに老齢給付金の請求を行わなかった場合、積み立てた個人別管理資産は自動的に現金化され、一定の手続き後、一時金として支給されます。
- 転職したときなどに積立資産の持ち運びが可能です。
- 税制面のメリットがあります。
確定拠出年金運営管理業務に関する勧誘方針
当行は、銀行のもつ社会的責任と公共的使命の重みを常に認識し、自己責任に基づく健全かつ適切な業務運営を通じて、社会からの揺るぎない信頼の確保に努めております。また、当行は、あらゆる法令やルールを厳格に遵守し、社会的規範にもとることのない、誠実かつ公正な企業活動を実践しております。
当行は、確定拠出年金法における運営管理機関として、「企業型年金に係る運営管理業務のうち運用の方法の選定及び加入者等に対する提示並びに当該運用の方法に係る情報の提供」に関する業務を行い、また「個人型年金に係る運営管理機関の指定あるいは指定の変更」をしていただく際には、上記法令等遵守の姿勢を基本として、次の方針を掲げ、業務を行ってまいります。- 運用の方法の選定に際しましては、専門的な見識に基づいて行うとともに、お客さまに適した運用方法のご提示や情報のご提供を行ってまいります。
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